はじめてのピーチキャンプ

VOL.99

はじめてのピーチキャンプ

アウトドア誌上体感WEBマガジンである月刊LOGOSは、日本全国津々浦々で、アウトドア体験をしてきました。そして、旅するコンテンツでもある本誌は、各都道府県の老若男女と出会ってきました。出会いあれば、アウトドアあり。山梨県を旅した時にふらりと立ち寄った精肉店の女将さんが教えてくれた「ピーチキャンプ」。咲き誇る桃色の花の下で経験したそのキャンプは、なんだかとっても“はじめて”だったのでした。

撮影/関 暁   取材・文/唐澤和也

01土曜日の牛。

山梨県笛吹市は、桃の栽培面積・収穫量・出荷量が、日本一! って知ってました? そんな山梨県笛吹市の桃農園でピーチキャンプは開催されました。開催日は、4月6日土曜日&7日日曜日。その週末は天候に恵まれたのですが……まずは桃ではなくて、土曜日の牛です!

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02日曜日の桃。

花冷えといえば、桜の花見の時の冷え込みをさしますが、桃もなかなかどうして。ぶるっと体を震わして早朝散歩をしてみると、農園で桃の手入れをされている人がいました。花を摘んであげないとおいしい桃が実らないと知りました。はじめてのピーチキャンプ。日曜日は桃です。

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03

「出会いあればアウトドアあり。ピーチキャンプの巻」

取材後記

「出会いあればアウトドアあり。ピーチキャンプの巻」

 そもそもなぜにピーチキャンプなのか、という話である。
 はじまりは、昨年の「ぐるぐる富士山」というタイトルそのまんまの企画で、山梨県と静岡県をぐるぐるしていた時の偶然の出会い。噂のほったらかしキャンプ場での宿泊が決まっていたので、どうせなら地元のお肉屋さんでと「グルメショップすみよし」さんを訪ねる。「富士山のまわりをぐるぐるしてるんです」と言うと、女将さんが「ぐるぐるしてんだ?」と笑いながら教えてくれた。
「だったら、雨宮さんに会ったほうがいいよ。ピーチキャンプっていうのをやってるから」
「ビーチキャンプ? 海のない山梨なのに?」
「ううん。ピーチキャンプ。桃農園でのキャンプなんだって」
 そう言うと女将はまた笑い、「そうだ。私が電話してあげる」と雨宮さんに電話をしてくれて、突然の電話だったはずの雨宮さんは雨宮さんで、こちらがわかりやすい場所までわざわざ迎えに来てくれた。待ち合わせたのは、山梨県笛吹市某所。のちに知ることになるが、笛吹市はブドウそして桃の栽培面積、収穫量、出荷量いずれも全国1位の街。言ってみれば桃の三冠王の街なので、待ち合わせがありがたい。というのは、桃農園があちこちにあり、雨宮さんの実家の桃農園までなど、とてもじゃないがたどり着けそうもなかった。
 雨宮智也さんは、桃農家の長男だった。
 東京の大学に進んだのちに山梨に戻るも、家業は継がずに建築関係の仕事を選ぶ。ちなみに、智也さんのご両親はいまも桃農家としてご健在だ。
 智也さんの学生時代の所属はアウトドアサークル。「伊豆七島に米だけ持っていって何日キャンプできるか?」なんてワイルドな活動をしていたそう。
 忘れられないのは、学生時代に東京から自転車で帰省した時の景色。1日とちょっと。甲州街道(国道20号。東京都中央区から長野県塩尻市まで。神奈川県相模原市、山梨県大月市などを経由)沿に走ってればつくんでしょと軽いノリでスタートしたが、立川のあたりで早くも後悔する。
「4月でした。山梨の地元の友達から同窓会やるから集まろうぜって誘われたんですけど、最初は断ったんです。お金ない、電車乗れないって。そしたら友達が『アウトドアサークルでしょ? 自転車で帰ってくればいいじゃん?』と。あ、そっかって軽い気持ちで自転車をこぎ始めたんですけど、高尾のあたりに大垂水峠という難所があるんですけど、まぁきつくてきつくて。しかも、当時はローリング族の聖地でしたから、キキキキーっなんてコーナーを攻めた車がガンガンに通っていて。危ないし怖かったんですけど、なんとか越えて、最後の難関が笹子峠でした。上下で2車線しかない狭い道なんですけど長いトンネルがあると。はたしてこんな所を自転車で通り抜けていいのだろうかと悩んでいたら、ギューンってロードレーサータイプの自転車に乗った人が突っ込んで行ったんですよ。あ、行けるんだと思って。長距離トラックにがんがんにあおられながらようやくトンネルを抜けて、鼻をかんだら真っ黒でした(笑)」
 最後の難所を越えると、くだりが続くので爽快な気分だった。旧大和村を過ぎて、勝沼に入ると、それまで樹々などで覆われていた視界がいっぺんに開ける。目に飛び込んできたのが、ピンク色に染まった広大な桃農園だった。
 その美しき桃色を見て、智也青年は号泣してしまう。
「ピーチキャンプをはじめた原点は、あの故郷の美しさをみなさんに伝えたいという想いが強いです。笛吹市は桃の収穫量などで日本一なんですけど、意外と岡山県のほうが桃の産地感があったりする。でも、そういうデータを並べて他県の人とかにアピールするより、あの美しさのなかでキャンプしてもらったほうがなにかが伝わるんじゃないかと思いまして。あと、父親への想いというのもあります。父親の時代は選択肢がなくて桃農園を継ぐしかなかった。なのに、僕には大学まで行かせてくれて好き勝手にやらせてくれて。農業を継ぐことはできないけど、親父の桃の役には立てるかもしれないと。まぁ、桃農園のほうは農業経験ゼロだった嫁さんが手伝ってくれていて、彼女にも頭が上がらないんですけど(笑)」


男子の冒険とは××である?
ツッコミどころ満載の会話。

 日曜日の早朝、まだ誰も起きていないなか、寝袋を抜け出した。
 土曜日の日中のあのあたたかさはなんだったんだ?というほど、めちゃくちゃに寒い。いわゆる寒暖差というやつが、作物をおいしくすると旅先の農家の方にお聞きしたことがあるけど、人間にはどうなんでしょう?  男だったら渋みなんてものが増すのだろうか?
 キャンプ地となった農園のまわりを散歩してみた。
 さすが桃の三冠王の街。やっぱり、あちこちに桃の農園がある。日曜日だというのに、農家さんは働いていた。藁を巻かれて大切に育てられている苗木。日曜日だというのに、桃はかわいがられている。
 その様子を見て、今回のピーチキャンプの会場を提供している大北農園の風間さんとの会話を思い出した。
「桃を育てるのは難しいですか?」
「難しいと言えなくもないですけど、桃の木にブドウはならないので(笑)。桃はもともとおいしいし、ほっておいても育つんです。でも、いかに人間が手伝ってあげるかはやっぱり重要で、たとえば、摘花という作業をしないとどうなるか。その桃の木は、4月のこの時期にものすごく美しく咲き誇ります。でも、夏に実った桃の味はいまいちなんですね。理由は咲くことで養分を使いすぎてしまうからなんですよね」
 散歩から戻ると、子供たちを筆頭にみんなが寝袋から出始めていた。
 風間さんの息子の埜樹くんに、昨日なにが一番おもしろかったか聞いてみる。
「えっとね、蓮くんのお父さんと星を見たよ! サソリ座!」
 蓮くんとは、主宰者雨宮さんの長男。埜樹くんと蓮くんは学校が別々で、このピーチキャンプでしか会えないそうだ。桃の木の下でしか会えないとは思えぬほどに仲がいい。というか、キャンプで出会った子供たちは、一緒に『ドラえもん』を微動だにせず見ていたり(すごい集中力だった)と仲がよかった。編集部の隣りのサイトで知り合った上條さんの奥様が「この頃は家族でキャンプだと、長女なんて『また?』みたいなテンションであまり乗り気でなかったんです。でも、今回のピーチキャンプは友達ができるかもって上機嫌でした」と教えてくれた。
 昨夜の男の子専用テントでのこと。トイレに行こうと思ったら偶然に聞こえてきてしまった、桃の木の下で友達になった子たちの会話を思い出す。
「ねぇねぇ?」
「なになに?」
「もうちょっとしたら冒険しようよ」
「いいねいいね。なにする?」
「星の冒険は?」
「いいね! でもさ、その前に1回、寝袋に逆から入ってみない?」
「やろう!」
 男の子たちはきゃっきゃと笑って、恐らくは寝袋に頭から入っていた。(それって冒険なのかな?)などとツッコミどころはあるけれど、素敵な会話だなぁと思う。たぶん、アウトドアの意味はこういうところにもある。いつもと違うテントという名の合部屋でテンションが上がらぬわけがないし、子供たちだけだからこそおバカなことで盛り上がれる。

 はじめてのEnjoy Outing!体験だったピーチキャンプ。
 振り返ると、主宰者の雨宮さんとは1度目が実家の、2度目となる今回が風間さんの農園でいろいろと話をした。ピーチキャンプだけでなく、お坊さんを囲んでのたき火会も企画中だとか。今回、少しだけ話をしておもしろかった風間さんにも桃のことや、関係ない雑談もしてみたい。男同士で、桃の木の下で。


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