生まれてはじめてのひとりキャンプ

VOL.88

生まれてはじめてのひとりキャンプ

お待たせしました! 月刊LOGOSの隠れ人気企画=ひとり旅シリーズの復活です。今回は、編集長ではなく昨年の秋キャンプ企画ルポなどでもおなじみの新人編集・竹内順平がルポします。もちろん、竹内順平が新人なのは、編集者としてだけではありません。キャンプだけでなく、旅すらも「ひとり=寂しい」と感じる「ウサギか!」男子だったのです。どうなる??? 波乱万丈2泊3日の岐阜キャンプを、どうぞ!

撮影・取材・文/竹内順平(BambooCut)

01Let's Enjoy! ずーと、ひとり。

ひとり酒をEnjoy
さっそく「LOGOS
いろんな不安はあるにせよ、キャンプ場に着けばほかの人もいるだろうし、なんだかんだで楽しいんだろうなぁ……と、なるべくポジティブな言葉を自分に言い聞かせ、出発しました。しかぁーし! 目的地の「ウィングヒルズ白鳥リゾート」へ到着することさえ一苦労だったのでした。

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02Help me! ずーと「ひとり」。

車で20分。目的
LOGOSのレインウ
せっかくの機会なんだから、楽しんで帰りたいと、道の駅に行ったり、滝を見に行ったり、薫製梅を作ったり。しかし、「地震、雷、火事、ひとり。」2日目の午後は、このうちのふたつを味わうこととなりました。それでも最後まで楽しみ切った「ひとりキャンプ」を、どうぞ!

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03

「孤独とは満足」

 ある日、僕のもとに編集長からある指令と大きなダンボールが1箱届きました。指令内容は「ウィングヒルズ白鳥リゾートを目指せ」。そして、ダンボールの中にはリュックやレインコート。「おいおい、今回の仕事はスパイ大作戦なのかな?」そんな状態になりました。
 なぜ、この状況に僕がなったのかと言いますと、恒例企画「編集長ひとり旅」が新人編集の僕にまわってきたのです。僕は基本的に淋しがり屋でして、「孤独」になる可能性が非常に高いこの企画には、あまり乗り気ではありませんでした。にもかかわらず、編集長からオファーを受けた時、僕はある思いを巡らせ、無謀な提案をしてしまったのです。
「ひとりキャンプがしたいです」。
過去のキャンプ取材のたびに出会う「ひとりキャンパー」を見て、「1日中ひとりでキャンプをして、いったいなにが楽しいんだろう?」僕はそんな疑問を常に抱き、理解できずにいました。そこで編集長からオファーを受けた時、僕はふと、「やったこともないのに、ひとりキャンパーの気持ちを理解できるわけがない」と思ったのです。そこで、「ひとり旅」ではなく「ひとりキャンプ」をすることを志願しました。
 あらためて言いますが、僕は基本的に淋しがり屋です。この企画を出してしまったことに何度も後悔しました。なんとしても「孤独」は避けたい。僕は希望の光がどこかにないか、なるべくポジティブに考えるようにしました。
 指令にあった「ウィングヒルズ白鳥リゾート」を調査してみると、そこはとても楽しげなキャンプ場でした。敷地内に温泉があり、マウンテンバイクのコースもあったり、山菜採りもできれば、ゴンドラに乗って山頂のほうまで行くこともできるという、ひとりでも遊べそうな楽しみがたくさんあります。「あれ? 意外にも楽しそうな場所だ!」内心ちょっとわくわくしました。ありとあらゆるシミュレーションをして、楽しんでいる自分を想像しました。温泉につかって癒されている自分。マウンテンバイクに乗って上級者コースに挑戦しながらカッコつけている自分。山菜採りをして山菜ご飯を作っている自分。ゴンドラに乗って風景を見ながら俳句を読み上げる自分。ありとあらゆる楽しい自分を想像し尽くした取材当日、完璧な状態で玄関を飛び出しました。
 最初に目指したのがロゴス直営店「ロゴスショップ モレラ岐阜店」でした。そこで接客してくださったスタッフの小林沙織さんとの出会いが、とてもよかったんです。とにかく説明が上手で、とても親切で、不安な僕の心を見事にほどいてくれました。ジャンルを問わず、はじめてのことあるあるだと思うんですが、どういう人と最初に出会えるかどうかってとても重要ですよね。
 僕はBambooCutという会社で「梅干し」を中心にイベントや商品の企画をしています。最初に梅干しをテーマに選んだ時、僕は東京生まれの東京育ちなので、梅干しの当てなんて一切なかったんです。それでも、とにかく梅の本場の紀州に行ってみようと9時間も車を走らせて向かいました。
 そして、たまたま最初に出会った梅干し屋さんの人が素晴らしい方で、会社の見学をはじめ、梅農家さんやほかの梅干し屋さんを紹介してくださったんです。その方に出会えていなければ「いま」の状況はありませんでしたし、梅干しの魅力にとりつかれることもなかったのかもしれません。そういう意味では、僕の「ひとりキャンプ」のスタートも完璧でした。
 しかし、そんな幸運を忘れてしまうほどアクシデントも多かったのです。行きの新幹線の時刻を間違えたのも、3分早いのに乗っちまったんです。みなさんはご存知でしょうか? 3分早いのに乗ったら、1時間到着が遅れるんです。「のぞみ」ではなく「こだま」に乗ってしまったのが原因なのですが、「こだま」のやつ、見事にすべての駅に止まるんです。なんじゃそりゃ! 各駅停車と一緒じゃねーか!と言ってやりたかったですが、すべては自業自得。僕は今年でもう29歳になります。俗に言うアラサーなのに、こんな間違えをするなんて、恥ずかしいったらありゃしません。
 でもですね、そんなアクシデントは序の口でして、アイテムを受け取って無事にロゴスショップを出発できたかと思えば、東京から持ってきた自分のリュックをお店に忘れてくるし。やっとキャンプ場に到着し、あたりを見渡して愕然。広い敷地にいるのは僕ひとりだけでした。梅雨時の平日はお客さんが少ないそうですが、僕の事前シミュレーションでは、何人かのキャンパーがまわりにいて、たまに挨拶をしたり、夜はふらっと一緒にお酒を飲んだりしていたのです。
 そして、もうひとつ愕然としたのは、温泉以外のアトラクションはすべてお休み。梅雨時は週末以外、基本的に運休なんですって。なぜ先に知ることができなかったのか? もちろん、毎度おなじみ自業自得です。山菜採りこそ「どうぞ!」と言われましたが、結果、大雨すぎてできるわけがありませんでした。「なんて日だ。あれだけシミュレーションしたのに、いったいなにをすりゃいいんだよ?」。頭の中はもう真っ白。
 唯一楽しめる温泉ですが、キャンプ場に到着できたのは18時30分。温泉に入れるのは19時までなので、テントを張るか、温泉に入るかの究極の選択を迫られ、もちろん身の危険を感じ、テント張りを選択。初日は温泉にも入れませんでした。
人の気配?と思えば、キツネが出てきて「コンにちは」。編集長に「キツネが出ました。この場合、熊も出ますか?」と連絡すると、返ってきた答えは、心細くて仕方がない3文字「たぶん」。豪雨は降るは、雷で避難するは、もうね、さんざんですよ、本当に。
 でも、これだけ「息子が好きすぎて、結婚相手にグチグチと小言を言う姑」のようなことを言っていますが、ひとりキャンプが嫌いになってしょうがないかというと、そうでもない自分の気持ちが、ちょっと不思議なのでした。


 ひとりキャンプ2日目の日中にふらっと立ち寄った白山文化博物館は本当に素晴らしい展示でした。白山についての展示内容もよかったのですが、僕が魅かれたのは「暮らしの道具」。まだ現代のようにデジタルや鉄の加工技術が進歩していない時代に、昔の人は木材を使ってあらゆる「暮らすための道具」をこしらえていて、さまざまな用途と意味のある道具がぎっしりと並んでいました。食材を確保するための道具。雪山でも寒さを凌ぐための道具。生活を豊かにするための道具。どれも手作りで、いまでこそ簡単に作ることのできるようなものも、その当時は丁寧に手作りするしかなかったことがわかるわけです。
 なぜ、ここまでその展示に感動したかというと、キャンプ道具にも今回感動したからなんです。とにかくアイデアが込められている。キャンプをすることが便利になるように、豊かになるように設計されている。それを今回のアイテムの節々に感じました。たとえば、スプーンとフォークが半分に折りたためるようになっているのも、とにかく「持ち運びがしやすいように」との工夫ですよね。「そこまでする?」と言いたくなってしまうほど芸が細かい。それって、単純にひとくくりにするなら「よりよいキャンプ(暮らし)をして欲しい」という想いの具現化のはず。人間は本当にすごい生き物だと思いました。
 想いや、その想いをカタチにするための工夫っていうのは昔からずっと変わっていないんだなと、深く関心してしまったのです。そして、その工夫にこそ、暮らしをするなかで、心を満たすための要素や価値が、溢れているのだと思ったのです。ひとりキャンプでの出来事にさまざまなストレスを感じましたが、道具に関しては一切のストレスを感じることがありませんでした。よくよく考えると、これってすごいことだと思います。だからこそ、「ひとりキャンプ」に集中ができた。真剣に向き合うことができたんです。
 大自然の中にひとりぼっちと思っていましたが、こういう道具に、人を感じることができたのは、なんだか誰かに支えられている気がして、とてもうれしいことでした。


 出発する数日前、とある居酒屋で出会った男性がベテランソロキャンパーだったので、ストレートに「なにが楽しいんですか?」と問いかけてみました。返ってきた答えは実にシンプルで「孤独とは満足」。しかも、「1回のキャンプではその意味はわからないかもね」ともおっしゃる。この時、その言葉の意味はわかりませんでしたが、有り難く頂戴しまして、僕はとにかく予定を決めずに真正面からぶつかってみようと決意したのでした。
 今回のキャンプ、何度も「僕はいま、生きています。」そう思いました。文章にすると「おおげさだよ!」と感じると思いますが、もっと小さく心の中でうなずくような、ひとつひとつ噛みしめるように、何度も何度も感じ、思ったのです。
テントやタープの準備が終わって椅子に座りホッとした瞬間。
ごはんを自分で調理し、口いっぱいに味を感じた瞬間。
雷から逃れ、火を見つめながら一日の出来事を振り返る瞬間。
キツネがやってきて言葉はなくとも会話をした瞬間。
いろんな「瞬間」たちに、ひとつずつ、それぞれの「満足」がありました。そのたびに、だれに満足させてもらったわけでもなく、自分が自分を満足させたという、ひとりぼっちな「自分」の存在を、「満足」という感情とともに感じることができたんです。
 大都会である東京にいるといろんな情報が飛び込んできます。お店の看板。商品の広告。交通機関の表札やら時計やら。他人の表情に、画面から発光するさまざまなニュース。闊歩する人の足音や、まったく覚えられない複数のアナウンス。そんな巨大な集合体のような情報が入ってくる時間は、情報のなかに自分がおぼれて、方角がわからない迷子のように、まったく自分を感じられていない時間だったのかもしれません。そう思うほど、情報を削ぎ落とされ、自分という存在がまったく空間のなかにまぎれていない「ひとりキャンプ」では、情報がはっきりとしていて、そのひとつひとつをしっかりと受け入れることできます。そのことが「満足」へとつながっているのだと思います。
 自然の中にお邪魔させてもらい、太陽の動きも、天候も、なにもかもが、自分がコントロールすることのできない、無力な自分。 まさに「孤独」です。その「孤独」のおかげで「満足」を感じられたことで、見知らぬ男性からもらった言葉「孤独とは満足」の意味が少しだけわかったように思えました。
 まぁ、そんなことを言いつつ、正直に言っちゃえば、しっかりと淋しかったです。それでも、孤独な3日間は本当に貴重な体験でした。なぜなら自分がどんな人間か再確認できたからです。やっぱり僕は誰かと話していないとダメみたいです! 犬に話しかけている飼い主のように、僕はキツネに何度も話しかけちゃいましたし、東京に帰ったら一気に3日分はしゃべり倒しましたから(笑)。次は絶対にまわりにソロキャンパーがいそうな時期を狙って、ひとりキャンプに再挑戦したいと思います! だって、どーしても、しゃべりたいんだもん!


04LOGOSLAND 第1期オープン最速レポート

LOGOS LAND オープ
噂のLOGOS LANDが、ついにオープンしちゃいました! 東京ドーム2個分の敷地内には、どんなEnjoy Outing!が詰まっているのでしょう? オープンに先立って開催された内覧会の様子をさっそくリポートしてきました。撮影/関 暁 取材・文/編集部

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