冬とたき火。

VOL.109

冬とたき火。

7度目の冬企画となる今回は、世界一の街を目指しました。1日の降雪量が世界一を記録したことがある新潟県・妙高。冬とたき火をテーマに、オリジナリティあふれるイベントやスノーシュー&雪上BBQなどを体験してきました。全国的に問題となった雪不足は世界一の街にも影響があったのですが、編集部人生初の冬の花火や、月刊LOGOSとしては恒例ともいえる人との出会いを、どうぞ!

撮影/関 暁  取材・文/唐澤和也

01妙高のダイナマイトカーニバル!

約60年前に生産
月刊LOGOS編集長
ダイナマイトカーニバルという名前がまず気になりますよね? たとえばですね、たき火的炎とスルメというご覧のシュールな1枚も、このイベントの名場面のひとつだったりします。看板に偽りなし。ダイナマイトでカーニバルをはじめとする妙高の1日目を紹介します。

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02雪上のたき火&BBQ!

「Lodge Raven」オ
「Lodge Raven」の
LOGOS的雪上BBQ推
妙高の2日目と3日目は、ふたつのKに恵まれた旅となりました。ひとつ目のKは幸運のK。雪不足のため急遽企画した雪上BBQに、ふだんは冬季営業をしていないのにもかかわらず協力してくれたキャンプ場と出会えたのです。ふたつ目のKはラストの取材後記にて、ぜひ。

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03

取材後記

冬とたき火とオリジナリティ。

 冬企画が好きだ。でも、なぜ好きなのかが不思議だ。
 2014年の郡上からはじまり、秋田のかまくら、岩手の雪合戦、群馬県の犬ぞり、津軽のストーブ列車、そして網走のワカサギ釣り。どの旅にもEnjoyな思い出しかないが、今年の旅は、新潟県妙高を目指すこととなる。注目は「1日の降雪量が世界一」を記録したことがある町だということ。1946年の1月17日、わずか1日で210cmもの積雪量を記録している。旅するWEBマガジン=月刊LOGOSで日本各地を旅していると、やたらと「日本一のなんちゃら」という看板を目にして「日本一、ちょっと多くないっすか?」と若干のインフレ感をいただくことがあるが、世界一はすごい。いったいどんな雪景色なのだろう?
 ところが、妙高の地に足をおろした時、思わず一句読んでしまった。
「雪よけの スプリンクラーが 切ないよ」
 この冬、日本全国で話題となった雪不足のせい。というか、雪がない。世界一を記録した日とほぼ同じタイミングの2020年1月18日だというのに、世界記録の210cmマイナス210cm、つまりゼロ。例年ならば駐車場に積もった雪をとかして大活躍しているであろうスプリンクラー的なものから、黒いアスファルトに水がちょろちょろと流れている。ちょろちょろに責任はないけど、ちょっぴり切ない。
 だが、冬企画の醍醐味は、雪だけにあらず。毎年毎回、人との出会いもありがたい。最初に訪ねた妙高人である西脇謙吾さんが教えてくれた。
「昭和51年の豪雪の時は、国道が48時間ストップしたことがあります。完全に陸の孤島状態で、トラックの運転手さんも動けなくなっちゃって、いまでいう民泊状態でした。ふだんなら1m50cmぐらいは積もっているかなぁ。でもね、克雪という言葉があるように、我々にとっての雪は敵でもあるけど、実は、味方でもあるんです」
 西脇さんが雪=味方と語る理由は、フォトリポートで紹介した、世界でも類を見ない独自のジーンズ作りにある。
 雪解け水が伏流水となる。伏流水が溜まった井戸の水は通常の約7倍の鉄分が含まれていた。父親の家業がジーンズショップで子供の頃からジーンズに囲まれていた西脇さんは思いつく。薬品を使って風合いをだすブランドもあるが、約7倍もの鉄分がジーンズの藍と絶妙な化学反応をみせるのではないか。そうひらめいた西脇さんは、さらに「!」なアイデアが浮かぶ。
「ユネスコの無形文化遺産にもなった新潟県小千谷市の小千谷縮がヒントになりました。小千谷縮は織物を雪の上にさらすことで生地が漂白されて独自の風合いを生みだすんですね。だったら、ジーンズにも効果がないわけがない。それでほら、ふだんなら1m50cmも雪が積もるので、ジーンズの雪さらしを始めたんです。最初はいろいろ言われました。バカじゃねーかと(笑)」
 一部の人から笑われようと、西脇さんは自分の直感と、いままで培ってきたジーンズに関する独自のノウハウを信じた。結果、西脇さんのジーンズは、妙高はもちろん、日本中にファンを獲得する。


迷走? メッセージ打ち上げ花火秘話。
かくして、LOGOSカラーの花火が夜空に咲いた。

 残念ながら西脇さんのジーンズの雪さらしは見れなかったけれど、我々には切り札があった。この切り札、名前からしてすごい。「ダイナマイトカーニバル」。ダイナマイトでカーニバルなのがすごい。元々は地元住民だけの小正月行事を観光客にも楽しんでもらおうと、会場を移して観光協会が主催している。この会場のチョイスがいい。「妙高杉ノ原スキー場」。スキーは数回程度の経験しかなくミスターボーゲンの我が身だけれど、スキー場というのがいい。なんたって、雪がある。だからこその切り札だった。
 はたして、妙高杉ノ原スキー場は麗しの銀世界だった。
「ありがとう 嗚呼ありがとう ありがとう」
 誰に感謝してんだか意味がわからないし、句にもなっていないが、心のなかでつぶやかずにいられない。
 ダイナマイトカーニバルの昼の部は、スキー場の一部を貸し切ってのスノボのイベントで盛り上がっていた。おしるこ、ラーメン、たこ焼きにうますぎ焼き(妙高で超メジャーな香辛料“かんずり”が入っている)などの屋台も出店していて活気がある。
 もちろん、イベント参加者ではなく、ふつうにスキーやスノボを楽しんでいる人も多かった。利用客に聞いてみると「妙高杉ノ原スキー場」は、とにかく雪質がいいらしい。駐車場には、東京の多摩ナンバー、神戸や名古屋ナンバーもあり、全国からこの雪を目当てに滑りに来ているご様子。そんなスキー&スノボ客がEnjoy Outing!終わりでダイナマイトカーニバルに参加している。外国人観光客の姿も目立つ。
 圧巻は、夜の部のどんど焼きと大花火大会だった。
 まずは、どんど焼き。神事なので神主さんの祈祷後、だるまやしめ縄などをガンガンに焼いていくのだけれど、ぐるぐると竜巻のように火が昇っていく。冬とたき火というタイトルにちなむなら、どんど焼きは、たき火界の4番打者的風格だった。
 意外だったのが、スルメ。妙高オリジナルの風習だそうで、どんど焼の火が収まったところで、長めの竹の先につけたスルメを焼いて食べると、この1年間無病息災なのだという。この行事にもたくさんの外国人観光客が参加していて、我々ももちろん長めの竹にスルメをぶら下げて参加した。僕がスルメを焼いていた左横からは英語で話す親子の会話が耳に届き、右からは中国語で楽しげなカップルの言葉が届いていた。ダイナマイトなカーニバルはワールドワイドでもあった。
 そして、大花火大会。
 夜の闇の色と雪の白い色を空から花火が照らす。しかも、特別な許可を得てLOGOS KAGARIBIというたき火台をスキー場に置かせてもらえたものだから、たき火越しの花火というオリジナル感がハンパない。
 オリジナルといえば、ダイナマイトカーニバルでは、希望者のオリジナルメッセージ付き花火というのを8000円から受けつけている。ナレーションのあとで花火が打ち上げられるというものなのだが、なぜだか我々は“メッセージ”の意味を勘違いしてしまう。文字化したメッセージを花火にして打ち上げてもらえると思い込み「ENJOYという文字だとどうですかね?」などと担当者の方と相談していた。担当の人は<そっちのメッセージじゃないですから!>と即断ってもいいはずなのに、わざわざ花火師さんにかけあってくれ、さすがに今回は準備の時間が足りないのであきらめましょうとなる。
 でも、観光協会と花火師の方は、最後までやさしかった。ENJOY の文字花火のやりとりの際にLOGOSのイメージカラーが緑であることを覚えていてくれ、わざわざ緑色の花火を用意してくれたのだ。
 当日。本当の意味でのメッセージ=アナウンスが、夜の会場に響く。
「みなさーん、アウトドアブランドのLOGOSをご存知ですか? 今回、月刊LOGOSというWEBマガジンの取材でお邪魔しております。皆様のご多幸を願いまして、LOGOSのイメージカラーの花火を打ち上げさせていただきます。もし、よかったらLOGOSの合言葉“Enjoy!”とご唱和ください。では、いきまーす。Enjoy!」
 そして、打ち上げられた緑色の花火。会場のあちこちから「Enjoy!」の声が聞こえる。もう1発、緑色の花火が打ち上がった時、残っていたスルメを握りしめるように、右手で小さくガッツポーズをした。


かんずり雪さらしの裏側にKありき。
気合い、あるいは、根性のKでした。

 妙高3日目は、雪が舞う白銀の世界に、大ぶりな赤い唐辛子が降っていた。
 かんずりの雪さらしである。白い世界と赤のコントラストが美しい。
 かんずりとは、唐辛子に糀、柚子、食塩を加えた妙高オリジナルの伝統的調味料のこと。ダイナマイトカーニバルでも、うますぎ焼きに入っていたし、立ち寄ったラーメン屋さんにも当たり前のように置いてあった。
 実はこのかんずりが誕生したのは「偶然」だったそうだ。有限会社かんずりの東條昭人社長が教えてくれた。
「このあたりの農家さんって、唐辛子をいろいろな料理に使うので、軒下で乾燥させておくんですね。冬場でもそうしておくんですけど、ある風の日に雪の上にぽろっと落ちたのを知らないでいて、さらに雪が降ったもんだから何日か出てこなかった。それをうちの祖父……初代社長なんですけど、数日後の晴れた日に雪が溶けてその唐辛子を見つけてかじってみたら苦味がなくてすごくおいしかったらしいんです。これはいけると。それで、かんずりの雪さらしが始まって、以来ずっと大寒の日にその年はじめての雪さらしを続けているんです。3年前が50周年でした」
 東條さんの話を聞いていて、腑に落ちることがあった。
 実は、雪不足のせいで今年の雪さらしは中止になるかもしれなかったのだ。でも、東條さんとスタッフはあきらめなかった。いつもの会場から少しでも雪の可能性を求めて高度を上げていき、最終的に協力をお願いしたのが「ロッテアライリゾート」というスキー場。ゴンドラに15分揺られてまで雪さらしにこだわったのは、祖父の代から50年以上も続く大寒の日の雪さらしを途絶えさせたくなかったのだろう。妙高のふたつのKのうちのひとつは、気合い、もしくは、根性のKだった。

 旅を終えて東京で原稿を書いているいま、オリジナリティってなんだろうと考えている。
 世界でひとつしかないジーンズを作っている西脇さんは「たとえば渋谷区神宮前では思いつかなかったアイデアでした。妙高だからこそのジーンズだと思います」と笑った。同じく妙高だからこそでありながらも、かんずりの東條さんは「実は、初代、2代目、3代目と時代にあわせて微妙に味を変えているんです」と伝統を守って古くからのファンを大切にしつつ、時代にあわせる挑戦もしていることを教えてくれた。
 そして、ダイナマイトカーニバル。主催する杉ノ原観光協会会長の鴨井さんには、スキー場で火を使えるように手配してもらったりと、お世話になりっぱなしだったのだけれど、あのオリジナリティあふれるイベント名の由来をこんなふうに話してくれた。
「杉ノ原スキー場はずっと赤字が続いていたんです。落ちるだけ落ちていたんで、爆発力がほしくて、だからダイナマイトだったんですよ(笑)。そもそも元々は地元のお祭りでしたからね。それをスキー場に会場を変えて、おまけに名前もダイナマイトでしょ? 変えた頃は“お前はなにをやってるんだ”とか、めちゃくちゃ言われました。でも、3年前からスキー場が黒字になったら、誰にもなにも言われなくなって。それで思ったのは、我慢なんてしなくていいんだなぁということ。雪深い地方で育つと我慢強くなる。それって美徳でもあるんだけど、新しいことを考えなくなる危険性もあると思うんです。だから、我慢なんてせずにまずやろうよと。やって試してダメなら引き返せばいいんだから」
 冬企画が好きだ。
 なぜ、かくも好きなのかはいまも不思議だけど、毎年毎回、THE オリジナルな人たちと出会えることは、冬企画好きのかなり大きな理由だと思う。


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