FUJI ROCK FESTIVAL '18

VOL.90

FUJI ROCK FESTIVAL '18

今年も来ましたフジロック! 22回目の開催、月刊LOGOSとしては6回目のフジロックです。年々ファミリーとアジア勢が増えていっているなぁとか、年齢層が全体的にあがってきているなぁとか、6年連続で来ていることで変遷的なものもちょっと見えるようになったりして。一方で、お父さんやお母さんにくっついてきていた中学生が高校生になって、自分の意志で参戦するようになっていたり。ますます幅広く、多彩になっていくフジロックの様子をたっぷりお届けします。

撮影/三浦太輔(go relax E more) 取材・文/安部しのぶ

01台風ドキドキ前半戦!

7月26日正午。
空のLOGOSキャリ
先日GOOUTでお会
LOGOSのキャリー
みんなドキドキしていたことでしょう。なにせ「本日午前3時に台風12号が発生しました。今後の台風情報にご注意ください」とフジロックの公式HPが呼びかけたのが前夜祭前日の7月25日。はたして無事開催できるのか? 心配と興奮が入り交じるなか、ゲートオープンです。

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02台風ハラハラ後半戦!

20周年で配布さ
マキシマム ザ
昨夜の「UNFAIRGR
帰り道でLOGOSの
LOGOSの旧式テン
GOOUT JAMBOREEとフ
結局、台風は会場には直撃しなかったものの(ホッ)、通り過ぎただけでもそのパワーは強大でした。大雨のなかでのライブ、ダメージを受けるキャンプサイト。自然の猛威に驚きつつ、そんななかでも笑顔でいるフジロッカーたちの逞しさにもまた、衝撃を受けたのでした。

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03

2018年ロックンロールの旅

 今年のフジロックは、変化を感じた年だった。
 前夜祭に出たMO'SOME TONEBENDERがMCで21周年だと語っていたり、初日1発目のライブだったMONGOL800も20周年だと言っていたり。大ヒットした『小さな恋のうた』も17年前だと聞いて驚いた。その月日を感じさせるかのごとく、ボーカルのキヨサクの恰幅もめちゃくちゃよくなっていてびっくりした。私の記憶の中ではフレッシュなロック兄さんで止まっていたから、その貫禄に一瞬、別の人が立っているのかと思ったほどだ。The Birthdayのチバユウスケとユニコーンの奥田民生は、あご髭が白くなっていた。ライブ中、「苗場20周年。20年前(の自分)は20歳…? いや、30か」なんてチバユウスケがボソッとつぶやいていたりもして、なんだか今年は、いたるところで年齢というものを意識させられる。
 今回の私的なベストアクトは、はじめて見たエレファントカシマシだった。スタイリッシュに着込んだスーツとネクタイをどんどん乱しながら右に左に暴れる宮本浩次の「死ね! 死ね! なに笑ってんだ。なに頷いてんだ。なに踊ってんだ」というアオリにしびれまくった。ハスキーな声が後半に向けてどんどんパワフルに、伸びやかになっていく。最近やさしい音楽しか聴いていなかったので、ステージ上から罵倒されたのが痛快で、一気にファンになってしまった。そんな年齢をまったく感じさせないパフォーマンスをしたエレカシも、30周年を迎えたという。
 フジロックに来るお客さんの年齢層は、当たり前かもしれないけれど、年々あがってきている。30~40代が多くなって、ファミリーが増えて、キッズエリアも増設されてすごく豪華になった。逆に尖りまくったロックなお客さんは、昔と比べたらだいぶ少なくなったと感じる。そんなことを書いている自分自身も30代後半で、もうすぐフジロック歴20年になるわけで、お客さんもアーティストも、フジロックのなにもかも、変化していかないほうがきっとおかしいのだ。
 でも、だからこそ、会場内で目を引かれたのは少数派の若者たちの姿だった。フジロックをまっすぐに楽しむティーンエージャー。家族と一緒に来ていたとしても、連れてこられたわけじゃなく、ちゃんと自分の意志でやってきた少年少女たち。とくに印象に残ったのは、こんな3人の青年だった。


 音漏れ必至の小さなイヤーパッドがついた昭和なヘッドホンに、手にはSONY製のカセットウォークマン。いまの時代から見ればおもちゃ感があるそれらを携えて、Tシャツをジーンズにインして颯爽と歩いていた男の子がいた。80年代から飛び出てきたような彼は定塚玲於くん、16歳。「十七歳の地図」と書かれたカセットテープを持っている。だれが見たって完全なる尾崎豊フリークだ。
「SONYのウォークマン、めちゃくちゃ高かったんですよ。46,000円もして。でも、どうしてもほしかったからバイトしまくってヤフオクで落札しました。もうクタクタでしたよ。体育以外の授業はずっと寝てる、みたいな(笑)。尾崎は今年の1月にお父さんの友達が教えてくれたんですけど、聴いた瞬間ものすごい衝撃を受けて」。なんとあまりの感動に、出会った3日後にお墓参りに行ったのだとか。どんなところが響いたの? と聞くと、「全部。夢とか愛とか自由とか、生きてく上で一番大事なことが歌の中に全部詰まってる気がした」。弾けるような笑顔で語る。情熱と行動が直結していて、見ていて気持ちがいい。「いま着てるのももちろん、尾崎ファッションです。Tシャツにジーンズ。Ray-Banも欠かせません。いつもこの姿だから、親には心配されてますけど(笑)」。
 一方、90年代のロックスターに魅せられている少年もいた。The Birthdayのライブ中に見つけた鈴木美野くん、15歳。3000円で購入したというつなぎの背中いっぱいに、浅井健一やThe Birthdayなどのロゴをアクリル絵の具でペイントしている。それらのバンドは(もちろんファンの年齢層は広いだろうけれど、主に)30~40代に支持されているアーティストで、15歳はたぶん、かなりめずらしい。美野くんが一番好きなのは元BLANKEY JET CITYのドラマー、中村達也。キッカケは「父親が知り合いから借りてきたCDが中村達也さんがやっているLOSALIOSの1stアルバムで、クルマの中でたまたま聴いて。言葉では言い表せないかっこよさがあった」。その影響でドラムを始めたけれど、ひとりで叩いているらしい。若手のバンドをまったく聴かないので、クラスメイトとは音楽の話があわないのだという。でも、彼から孤独感を感じるかというと、まったくない。「フジロック特集内に『バンドメンバー募集』って一言書いておく?」 と聞いても 「大丈夫です。いつかまわりにそういう人が表れたらで」と断られた。中に着た自作のTシャツもTHE GOLDEN WET FINGERS(チバユウスケ、中村達也らによるバンド)のもので、つなぎの胸元をぐいっと開いて見せてくれる。“好き”を静かに突き進む人は、年齢問わず強い。
 そして3人目。雨が降りしきるなか、Gジャンにベルボトム、コンバースという出で立ちで会場を歩いていた大塚元喜くん、18歳。 彼が誰を好きなのかも、その見た目ですぐわかった。今年のフジロックの大トリを務めるボブ・ディラン。彼のインタビューは一筋縄ではいかなかった。「ディランの一番好きな曲は?」「難しいですね」、「好きな映画は?」「いろいろ」、「夢はなに?」「よくわかんないです」。なびかない、表情もほとんど変わらない。そんな彼を見ていたらふと、ボブ・ディラン自身を思い出した。そうだ、あの人も一筋縄ではいかない人だった。ライブを音源通りに演らないし、ノーベル賞授賞式も欠席するくらいだし。そもそもディランが歯を見せて笑った顔を見たことがない。そんな彼のファンである大塚くんがもし、ふるまいすべてを捧げていたのだとしたら……? そう思うと、なんとキュートな青年だろうか。本当のところはわからないけれど、彼が醸し出す空気感にディランへの深い愛情を感じたのは間違いない。
 若い頃からブレずに、強すぎるくらいのこだわりをもって、自分だけの尺度で音楽を楽しんでいる彼らは、とてもまぶしかった。そして、ロックは時代を越えていくという3つのたしかな証明を目にして、ちょっと興奮した。音楽の飛距離の果てしなさ。いまから100年後の若者が、尾崎豊を聴いたらどう思うだろう。ちょっと先の話でもいい。3人が家族を持つ頃に、フジロックに流れる音楽はどうなっているのだろうか。若きフジロッカーの芽吹きは、いろいろな未来を想像させてくれた。


 そんな今年のフジロックの変化について、もうひとつ触れておきたいことがある。
 今回、ライブ合間のステージのモニターにはよく、「OSAHO(お作法)」と題したマナー啓蒙のムービーが映し出されていた。ゴミの分別、たばこの分煙、チェアの放置NGなど。フジロックはそういうことを日本で一番、お客さんの自主性にゆだねてきたフェスだったから、そんな映像が流れたことに少し驚いた。けれどそれだけ、マナーがひどくなってきているのだという。とくにゴミ。「世界一クリーンなフェス」が変わってきているのだ。
 実際の目で確かめようと、最終日の翌朝、はじめて終演後のキャンプサイトに行ってみた。
 ゴミが、ありすぎるほどあった。そのまま打ち捨てられたポンチョとか、フライパンなどの調理器具とか、ミラーボールとか。台風の影響でひしゃげて使えなくなったテントだけじゃなく、なんのダメージも受けていないテントが建ったままで捨ててある。
 なんで、こんなにたくさんゴミが捨てられるようになったんだろう。
 いまよりも昔のほうがゴミが少なかったのだとすると、前はみんなもっと軽装だったから、というのは理由のひとつとしてあるのかもしれない。アウトドアアイテムの数もそれを使いこなす知識も、いまよりうんと少なかった。15年前は、手ぶらの人だってたくさんいた。Tシャツにジーンズにスニーカー、雨がふったらそのまま濡れるか、ポケットに突っ込んでいたゴミ袋を引っ張り出して頭からかぶる、みたいなフジロッカー。いまは、かゆいところに手が届くアウトドアアイテムがたくさんあって、便利だし快適だから、できるだけいろいろ持っていくようになったのだろう。いまと昔でどちらのスタイルがいいか、なんて話じゃなく、持っていくものが増えたならばその分、捨てることに対しても気をつけなきゃいけない。それだけのことだと思う。ロックな人たちが減った分だけゴミが増えてしまったなんて、ロックフェスとしてそんな皮肉なことはないのだから。
 キャンプサイトを歩いていたら、ゴミを移動させているスタッフさんに会った。「今そこで、ミラーボールを拾いました。もったいないから、今年の思い出に持って帰ります」。稲垣彩野さんと藤倉思草さんは 2013年から5年間連続で終演後のキャンプサイトを片付けているという。「今年のキャンプサイトのゴミですか? 晴れて終わったのでまだマシなほうです。2013年の大雨のあとなんて、あまりにいろいろ残っていて絶望しましたから(笑)。でも拾っていく作業は正直、いつも大変です。収集車が来る歩道沿いにすべてのゴミを集めていくんですけど、上のほうから手で拾いながら下りていくのでどんどん両手がいっぱいになってきちゃって、重くて」。辞めたくならないですか? と聞いてみると「一瞬『もうつらい! 次はお客さんとして来たい!』なんて思うんですけど、気づけば翌年もスタッフで参加しちゃってて。2013年に出会ったメンバーがいまでも仲良しで、またこの場所に戻ってきちゃうんですよね」と笑いながら話してくれた。
 ちょっと真面目なシメになってしまうけれど、彼女たちと同じく2013年から5年間連続で月刊LOGOSのフジロック特集を担当している身として、この場所の変化に加担している身として、ゴミにまつわるエピソードも最後に書いておきたかった。それは2018年のフジロックが終わったいまわたしができる、来年に向けての「OSAHO」だ。
 昔行ったイギリスの「グラストンベリー・フェスティバル」のローリング・ストーンズのライブで、裸足で踊っているおばあちゃんの集団を見たことがある。自分もその年齢になった時、フジロックのクリーンな地面を踏みしめて踊りたい。年をとっていくこと、変化していくことは、フジロックが続く限りきっと楽しいことなのだから。


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