ここ掘れ!石川、秋キャンプ

VOL.93

ここ掘れ!石川、秋キャンプ

7回目の秋キャンプは、北陸の台所「近江町市場」が有名な石川県です。カニやのど黒など、おいしい海鮮が頭のなかを泳ぎ始めますが、今回は海ではなく「山のもの」を求めてきました。「ここ掘れワンワン!」なんて犬からは指示されませんでしたが、野菜を掘って、犬と遊んで、キャンピングカーも登場したり。いい季節に、豊かな土地で、素敵な時間をすごす。スローライフな秋キャンプの様子を、どうぞ!

撮影/関 暁  取材・文/竹内順平(BambooCut)

01掘って採って、いただきます。

取材は11月上旬
約40羽を放し飼
石川県ならではの「山のもの」を集めるべく、編集部は気持ちよい風にあたりながら、金沢駅から車で約30分のかほく市に向かいました。途中、貴重な収穫体験で腰を痛めそうになりながら、自然を体全体で味わい、収穫した食材を分けていただく、なんともぜいたくな1日目です!

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02煮たり焼いたり、いただきます。

22時。まわりは
最高の食材を手に入れてしまったら、もうなにも言うことはありませんよね。食欲の秋。むずかしいことは考えず、ひたすら煮て、ひたすら焼いて、口いっぱいに頬張るのみです! ご当地料理も用意しながら、地元のロゴサーファミリーを招いて、一緒に秋キャンプをEnjoyしました!

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03

「好きにしていいぞ」と言われなければ。

 はじめて訪れた石川県。まさかそのはじめての土地でいきなりレンコン堀りをするだなんて、まったくもって予想もしていませんでした。最初はさつまいもを掘るのと同じぐらいレンコン掘りも簡単な作業だと思ってました。いやいや、とんでもない。実際は一歩一歩前に進むことさえ困難で、なおかつ水中が濁って見えないから、手探りでレンコンを見つけ出すところからはじめなくてはならないのです。
 収穫体験をさせてくださったのは農業者の広瀬敦士さん。隣りで僕がレンコンを探しているところをニコニコと見守ってくださったのですが、いっこうに僕は見つけられません。「本当にレンコンあるんですか?」と、冗談っぽく笑って聞いてみると、「どれどれ」と言いながら、ものの15秒ほどで見つけてしまいました。さすがに驚きましたよ。「絶対にそこ探したよ!」という場所で見つけちゃうんですもん。僕もムキになって探し続けましたがなかなか見つけることはできず。すると、「最初はみんなこうだから」と、広瀬さんはそう言って僕をなぐさめてくれました。
 広瀬さんは18年前から農業をはじめました。その頃はさつまいもやスイカ、トマト、ナスなど、多種多様なラインナップを栽培していながらも、レンコンの栽培はまだしていなかったそうです。しかし、どの野菜もなかなか稼ぎにつなげることが難しいと悩んでいた頃(農業をはじめてから10年後)、いよいよレンコンの栽培を始めます。石川のレンコンは産地としても有名で、稼げる希望があったからです。
 レンコンは最初の「種」になるレンコンを手に入れ、あとは上手に育てることさえできれば、半永久的に最初の種だけで毎年繰り返し栽培をしていくことができます。が、その種を買うための大きなお金が必要です。そんな時、広瀬さんは「先輩に恵まれた」と言います。
 その先輩はレンコンの栽培方法を教えてくれた上に、「ここにあるレンコンの種、好きにしていいぞ」そう言って種を無償でわけてくれたのです。そのおかげで、広瀬さんはレンコンの栽培に少ないリスクで踏み切ることができました。
 この話を聞いた時、とても不思議でした。レンコンが名産品の同じ土地の人にノウハウを教えるというのは、ライバルを増やすということです。ましてや種をわけるだなんて、人が良すぎるとしか思えません。
 しかし、きっとそうやって農業は現代まで歩んできたのではないか。損得じゃなくて、「気持ち」で一瞬一瞬を判断してきたのかもしれない。
 僕がそんなことを考えたのは、今回の秋キャンプで「気持ち」を節々に感じたからでした。広瀬さんは「レンコンとさつまいものお金はいらないよ」と、快くわけてくださいました。ロゴサーの浜崎ファミリーは僕らの撮影に全面協力してくださいましたし、とても驚いたのはキャンプ場にプライベートで来ていたまわりのキャンパーが、「車はどこにおいたら撮影の邪魔にならない?」とか、「向こうに猿がいたよ!」って写真映えするものをわざわざ教えにきてくれたりとか、どこぞのものかもわからない僕らの撮影に、ものすごく協力的な振る舞いをしてくださったことです。その「気持ち」が「豊かさ」となって、金沢駅からキャンプ場にいたるまで、空気となって流れているように感じられました。


 僕はキャンピングカーを見るのも生まれてはじめてでした。とても高価なものですし、きっと道楽で購入されたんだろうと最初は思っていたのですが、浜崎泰彦さんにお聞きした理由は、僕の想像とは大きく違っていました。
 浜崎さんの息子さんである公太くんが生まれた時、浜崎さんは57歳でした。「自分の息子と元気いっぱいに健康で一緒にいられる時間は長くて15年だろう」そう考えていた浜崎さんは九州でたまたまキャンピングカーを目撃しました。キャンピングカーを購入すれば、公太くんとどこか旅に行く機会も増えたり、移動時間や寝泊りも濃密な時間になると考え、キャンピングカーの購入を奥様のちひろさんに相談しました。もちろん、ちひろさんもそう簡単にはうなずきませんでした。相談を重ねた結果、決め手はなんと「避難場所にもなるから」。
 東日本大震災のニュースを見た時のことを思い出して、「もし自分たちにも同じことが起こってしまったら、いったい私たち家族はどうなるんだろう?」と、ちひろさんは想像をしました。公太くんのこと。そして一緒に暮らす3匹のわんちゃんのこと。それを考えたら、キャンピングカーが家族みんなが集まって暮らせる場所になるならば、良い避難場所にもなるのではないかと考えたのです。キャンピングカーの購入を家族で決意し、泰彦さんはすぐに神奈川のお店に足を運び、その場で購入したそうです。
 浜崎ファミリーの特徴は、思い立ったら即行動することです。息子の公太くんは如実にその好奇心と行動力を我々編集部に見せつけてくれましたが、やっぱりお父さんはさらにすごかった。浜崎さんの忍法「思い立ったら即行動」は常人にはなかなかできるものではありませんでした。
 公太くんのために兵庫にある「おもちゃ王国」へ石川からキャンピングカーで遊びに行ったときのことです。兵庫でひとしきり遊んだ後、「せっかくここまできたんだから!」と、神戸、淡路島へと移動。すると、「せっかくここまで来たんだから!」と、高知へ移動。またしても「せっかくここまで来たんだから!」と、岡山へ移動。その後、「せっかく」が続きに続いて、神奈川・横浜・長野まで行き、気がつけば7泊8日の旅になっていたそうです。
 今回の秋キャンプ、ハプニングもアクシデントもとくになかったのですが、浜崎ファミリーはものすごく淡々と、飽きることなく、1分1秒を大切に「家族」で楽しんでいるようでした。その様子は「せっかくきたんだから!」に似ている考え方なのだと感じられました。


 秋キャンプの最終日、撤収を早めに終わらせて、新幹線に乗るまでの時間が少し空いたので、金沢観光をしました。近江町市場や金沢21世紀美術館など、短い時間でしたが、できるだけ早足で楽しみました。金沢の街を歩いていると、愉快に目に飛び込んでくる広告が数カ所にありました。それは、いろんな金沢の場所で子供が写真に写っていて、「ここも、金沢」というキャッチコピーが書いてあるものです。
 僕はうまれてはじめての金沢だったので、思いっきり海鮮のイメージしかありませんでした。もちろんそのイメージもハズレではないのでしょうけれど、レンコン掘りやさつまいも、養鶏所、広い道路のまわりに並ぶ木々や田んぼ。そして、山。そのすべてに「豊かな」という言葉が似合いました。広告に写っているのが「子供」というのもなにか豊かさを感じましたし、いろんな気持ちが込められているように思いました。
 その「豊かな」の一番代表的だと思ったのが「カニ面」です。「おいおい! ここまで引っ張って結局は海鮮かよ!」というツッコミはお許しください(笑)。
 カニ面とは、カニの身を一度殻からすべて綺麗に取り出し、もう一度カニの甲羅に戻し、それから蒸して、さらに煮る、というおでんのネタなんだそうです。はい。お察しの通り、僕は今回食べることはできませんでした。食べた方から聞いた話です。悔しくて悔しくていまでも震えます。
 でも、それを聞いた時、なんて日本人らしい親切な料理なんだと思いました。味ももちろん想像しただけでおいしそうですが、なにより殻から身を取るという「日本三大めんどくさいランキング」なんてものがあったらランクインしてきそうな作業を、代わりにやってあげて、そして喜んでもらおうという料理。素晴らしいじゃないですか!
 もしも、仮に僕が料理長だとします。もちろん料理はできませんが、料理長だとしてください! そして、仮に部下がいたとします。ある日、部下から突然カニ面という料理を提案された日には、「そんなの一匹一匹やってられっかぃ! めんどくさいからそれはお客さんにやってもらえぃ!」と突っぱねることでしょう。
 それは、きっと僕にサービス精神が足りないからなのだと思います。でも、サービス精神って、精神面や、体力面、財力面だったりと、いろんな要素からの「豊かさ」から生まれるものだと思います。
 そして、今回参加してくれた浜崎ファミリーには、その「豊かさ」が元々あったのかもしれません。けれど、少なからず、「キャンプ」を通して育んでいるようにも感じられたのです。
 それでは、最後になりますが、ここで大好きになった石川での秋キャンプを思いながら、一句読んでお開きとさせていただきます。
「レンコンの 穴から覗く 石川県 どの穴見ても カニ面の後悔」
 おあとがよろしいようで。来年の秋キャンプでは、どんな家族に会えるのか。いまから楽しみでなりません。


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