2017年末SPECIALアウトドアと旅。

VOL.81

2017年末SPECIALアウトドアと旅。

今年も一年、Enjoy Outing!のほど、お疲れ様です。あんなEnjoyもこんなEnjoyもあったなぁと振り返る恒例企画ですが、2017年は「Enjoyアウトドア編」と「春夏秋冬旅編」でお届けします。アウトドアWEB上体感マガジンである本誌は、日本全国を旅するWEBマガジンでもあります。共通している魅力は、なにもよりも人との出会いが至福のEnjoyということなのでした。

表紙撮影/GENKI   構成/編集部

01Enjoyアウトドア編

月刊LOGOSのはじ
「LOGOS チャコ
LOGOS2年目の同
編集部にふたりの若手Tが加わったからでしょうか? 振り返れば、今年はフレッシュな企画が増えた気がします。チェアをテーマに春の都内を歩いたり、ボルダリングに挑戦したり。月刊LOGOSの大好物=家族の肖像もフューチャリングしつつ、2017年をまるっとどうぞ。

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02春夏秋冬旅編

それでもEnjoy Ra
雪の群馬県水上にはじまり、春は日本三大朝市の地、夏には北海道のJOIN ALIVEなど、今年も日本全国を旅した月刊LOGOS。出逢ってくれた人々に感謝しつつ、2018年もよろしくお願いいたします。そして、旅といえば久しぶりの編集長ひとり旅企画も、よろしければぜひ。

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03

 群馬県をなめてはいけない。 
 小学校低学年児童の体重ぐらいはある重たいバックパックを背負い、馬のように息を荒げ、牛のようにゆっくりと足を交互させる。目指す場所が山の中にあるとはいえ、同じ関東だし東京とさほど変わらぬだろうとなめていた自分が悪いのだが、坂がきつい。荷物が重い。左手がうざい。左手には毎度おなじみ「LOGOSマイティ火消し壷」(以下、壷)。2.15kgのそれは、BBQやたき火アイテムとしてはすぐれものであるが、ひとり旅にはまったくもって向いていない。すれ違った農家の人が、僕の壷を不思議そうに見つめている。暑い。グレーのTシャツが汗で黒ずむ。
 思えば、移動時間からして、群馬県は手強かった。
 地元の始発電車から3本の列車を乗り継ぎ「新町駅」へ。さくっと朝食をとりつつバスに揺られて「古鉄橋」という停留所に到着したのが5時間半後。今回の目的地である「化石発掘体験地」までは、徒歩45分とガイドにはあるが無理だ。ガイドは、ちっさい小学生を背負っての移動を想定していない。「タクシーで移動すればいいのに」と思った方には、語気を強めてこう言い返したい。
 本誌プロデューサーGをなめてはいけない。
 まず、送ってくるアイテムが多い。だから重い。さらに、最近は指令が暗号化していて「恐竜と言えば、松ぼっくりですね」などと意味がわからないことを言う。なのに、ちょっと遠くを見つめて、さもいいことふうにこんなことを言う。
「いちおうアウトドアWEBマガジンの編集長ですから。タクシーは禁止でお願いします」
 だから、歩く。
 いちおうってどういうことだよと思いながらも、神流と書いて「かんな」と読む町を歩く。釣り人がのんびりと糸を垂らしている。


 このあたりが「恐竜の町」と呼ばれるようになったのは、昭和60年の“再確認”がきっかけだった。地元の人が「さざなみ岩」と呼ぶその岸壁にあった窪みが約1万年前の恐竜の足跡であると正式に証明されたのだ。以来、ある種の村おこし的に恐竜の町化が進んだ。
 約2時間。歩いて歩いて、ゴール。
 昼食を挟んだとは言え、目安の45分を大幅に超えていたが、それだけに達成感がみなぎる。期待感も募りまくる。簡単には見つからないのだろうけど、1億3000万年前の化石だなんてテンションがあがる。
 夏休みとあって、家族連れの姿が多くてほほえましい。みな、真剣な表情でカンカンとハンマーを叩いていた。係の方の説明によれば、狙い目は、黒い石だ。約1億3000万年前の海の泥が固まってできたその色の石には、逃げ遅れた貝などが化石となって閉じ込められている。黒い石の中に光ってたり、色や模様が違っていると化石の可能性が高い。
 さぁて、振り下ろしちゃいますか、ハンマーを。
 ところが、いかにも化石が見つかりそうなポイントは、家族連れが楽しそうにカンカンしていた。これは、はしゃいじゃダメなやつだなと、夏の思い出をじゃませぬよう隅のほうへと移動した時、ふと足元の黒い石が気になった。導かれるように拾ってみると、光っていて、柄が違うところがある。
 まさかねぇ、ひとつ目の石でねぇ、と思いつつ係の人に確認してもらうと「貝の化石です」とのお答え。
 え?
 それはたぶん、人生で一番絶句した瞬間だった。開始1分で1億3000万年って! もちろんうれしかったが、東京から数えて7時間半かけてのわずか1分って! なんだか複雑な思いを抱きながら、化石を探す旅はいきなり終わった。


 となると、松ぼっくりだ。
 さすがに、先の暗号指令では意味がわからなかったので、そのココロを聞いてみると、どうやら彼のなかでの連想ゲームがあったようだ。「恐竜」→「白亜紀」→「原始人」→「火の発見」→「あ、LOGOSアイテムでいいのがあるぞ」と。そのアイテムは「ターボファイヤー」という送風機能付きのミニたき火台。脂分を含んだ松ぼっくりはよく燃えるから、送風機能でさらにいい感じのたき火になるか、実験してきてほしかったらしい。
 結果、夕暮れ前の数時間後に、燃えた。すげぇいい感じで燃えた。「ターボファイヤー」のポテンシャルはハンパない。ひとりでのたき火はだいぶ淋しかったけれど。
 てなわけで、この指令自体は無茶ぶりでもなんでもなかったが、問題は、宿までの距離。携帯の地図アプリは徒歩約2時間17分だと告げている。帰り道は下り坂だから単純には計算できないけど、6時間以上はかかるだろう。かなりの絶望感だったが、歩かなければ1ミリも近づけない。1時間。2時間。行きのバス停を通りすぎてもさらに歩く。それでも、宿が永遠のように遠い。
 修行か! 
 僕はわりと大きめな声でひとりごつと、歩くことをあきらめ、壷を置いた。そして、握っていた右手を開き、代わりに頭の上で親指をビッと立てた。こうなったらもう、ヒッチハイクしかない。
 勝算がないわけではなかった。
 劇団の裏方だった20代の頃、ある事情で茨城県から東京に歩いて帰らねばならず、若いとはいえ体力の限界が訪れ、やむにやまれず親指を立てたことがあった。早朝だったので大型トラックしか走っていなかったけれど、5回目の親指で白い乗用車が急停車してくれた。
 急いで駆け寄ると、インド人のふたり組だった。カーステレオからガンガンに流れるインドポップス。後部シートには食べ終わったカレーの皿。一瞬ビビったけれど、眠気と疲労には勝てない。おそるおそる後部座席に乗り込んだのだが、彼らは終始白い歯をのぞかせ、陽気でやさしかった。言葉は通じなかったけど、身振りでポテチをわけてくれる。一緒に歌おうと言うので、無理じゃねと思いつつも、とりあえずハミングした。彼らのやさしさと陽気さのおかげで、僕は無事に東京へと戻れたのだった。
 あの時の奇跡よ、ふたたび。茨城も群馬も同じ関東仲間に違いない。折れんばかりに親指をしならせて、僕は右手をあげ続けた。
 けれど、群馬に陽気でやさしいインド人はいなかった。さて、どうする? 往路で用意していた水は飲み干していて、とにかく喉が渇いていた。ようやく見つけたコンビニとスーパーの中間ぐらいのお店に入ると、ふたりのおばちゃんが「どうしたの!?」と親身になって心配してくれる。すっかり干からびて、ひどい顔をしていたのだと思う。スポーツドリンク500mlを一気飲みした僕に、事情を飲み込んだおばちゃんが言う。
「旅館の人に迎えに来てもらえばいいんじゃないの?」
 え?
 人生2度目の絶句だった。
 旅館のご主人と「神流恐竜センター」の恐竜のオブジェの前で待ち合わせしたのはなかなかにシュールな絵面だったが、このご主人がものすごくいい人で、旅の目的を話すと松ぼっくりたき火にぴったりのキャンプ場へと連れて行ってくれた。上の写真で、夕暮れ前にすげぇ燃えて、しかもいい感じの滝が背景にあるのは、このご主人のガイドのおかげだ。
 翌朝。洒落のわかるご主人は、帰りも最寄りのバス停まで送ってくれた上に「東京に帰るにはまわり道かもしれないけど、日本一高い電車に乗って帰ってくださいよ」と上信電鉄線をすすめてくれた。たしかに距離に比べて高額な気はしたが、すぎゆく景色には風情があった。途中駅で気になった世界遺産「富岡製紙所」にもいつか行ってみたいなぁ。今度は火消し壷を持たずに、プレイベートな旅で。
 群馬県をなめてはいけない。


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